紅葉

Pastime
悠遊 2

俳句紀行

渓相ー奥多摩川

多摩川の源流・支流は東京都の水源として保護されているため、原生林があり、野生の動物も少なからずいます。……水は清く、滝もあり、全国各地の渓谷に劣らぬ様相を見せています。

① 「印象抄出」編  ② 「一谷遡行」編

作・木谷彩生


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① 「印象抄出」


東京にはどぶ川しかないと思っていたのに
青梅まで行ったら、何と、澄み切った川が流れていました。
三、四十年前、
多摩川の河口付近、田園調布の辺りの堰には
洗剤が泡立っていたころのことです。

それから二十年、

清流を訪ねいつしか滝の谷

多摩川を遡っていると、あちこちの支流に
滝があります。
都心に向いていた目には
まさか、
というほどの新鮮な驚きです。

せいぜい二、三十メートルの滝ですが、
多くの滝は秘境ともいうべき所にあります。
滝へは道はなく
谷の中を歩くしかないからです。
………

獅子口

(川乗山)

山葵田の花の葉隠れ水の音

北に吼ゆる岩戸水吐く沢芽ぐむ

峰々は内ふところに滝を秘め

入川谷

布滝の裾ひるがえる木の芽どき

子猿駆け小石ころころ春の沢

キツツキの音かろやかに春の尾根

振り仰ぎなお余りある滝頭

鳥鳴かず梢も揺れず滝の音

炎天に深く切れ込む山の襞

海 沢

三つ釜の滝に陰なすヤマボウシ

木洩れ日の射すや並走ねじれ滝

岩陰の噴霧や滝のほとばしり

人に似て逆さ吊りなる不動滝

樋なれど岩茸石の滝涸れず

川乗谷

滝たぎる白き炎の巌(いわ)の穴

カロー谷

行き着いて仰ぐ大滝青天井

滝壷に馬蹄の虹や真昼どき

美味し葉に子鹿そろそろ崖の縁

峰谷川

モモンガのカヤの木の穴冬日和

ぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ〜リス枝駆ける冬木立

後山川

晩秋の鉱泉宿の軒の星

おいらん淵

伝説の悲鳴かすかに滝の音

大黒茂谷

手すさびの神の階段(きざはし)滝下る

北秋川

崖広く翡翠(ひすい)の空に冬の滝

   ……………………………………

滝奥の枯薮透けて日の一輪


「渓相」という言葉は辞書には載っておりません。
名づけた当初は造語のつもりでしたが、
渓流釣りをする人や谷の遡行者の間で使われています。


           布滝へのリンク             聖滝へのリンク 
              布 滝               聖 滝
           (入川谷・布滝沢)         (日原川・川乗谷)

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② 「一谷遡行」

一つの谷をさかのぼってみます。句はメモのようなものです。
とはいえ、汗はしたたり落ちる!

丹波川・火打石谷








































  飛龍の滝へのリンク
   飛龍の滝
    (仮称)
  

短夜の明け行く先は西の谷

滝行きの腹ごしらえのダム湖畔

   …………………………

いざ滝へ地下足袋姿三人衆

投げ入れるワラジ清水になじみゆく

険谷の滝の関所か崖の門

   …………………………

小滝越え倒木くぐり淵を巻き

崖伝う手の置き所イボガエル

軒ほどの滝二つ三つ高巻いて

跳ね降りるザイル楽しや滝頭

   …………………………

追いつける釣り師いつしか先達に

魚止めの滝を釣り師と高巻いて

この先はきっとイワナの住むならん

釣り上がるすわイワナかなヤマメなり

   …………………………

倒木にうさんくさげなガマガエル

履き直し締め直す瀬の葉裏照り

炎天に岩瀬延々せり上がる

   …………………………

滝二条正午の腹に握り飯

忽然と青葉透かして滝の腹

怪獣のごとき岩肌滝洗う

崖よじて百メートルの滝見かな

名を問わば飛龍の滝と応うべし

   …………………………
崖涼し水の精かも谷川の

この谷には、奥多摩湖の奥の山梨県の丹波山村から北へ、
奥秩父の山のほうに向かって入ります。

釣り師(奥多摩川・小室川)

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