Pastime
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俳句紀行『渓相ー奥多摩川』 |
東京にはどぶ川しかないと思っていたのに
青梅まで行ったら、何と、澄み切った川が流れていました。
三、四十年前、
多摩川の河口付近、田園調布の辺りの堰には
洗剤が泡立っていたころのことです。
それから二十年、
清流を訪ねいつしか滝の谷
多摩川を遡っていると、あちこちの支流に
滝があります。
都心に向いていた目には
まさか、
というほどの新鮮な驚きです。
せいぜい二、三十メートルの滝ですが、
多くの滝は秘境ともいうべき所にあります。
滝へは道はなく
谷の中を歩くしかないからです。
………
獅子口(川乗山) |
山葵田の花の葉隠れ水の音北に吼ゆる岩戸水吐く沢芽ぐむ峰々は内ふところに滝を秘め |
入川谷 |
布滝の裾ひるがえる木の芽どき子猿駆け小石ころころ春の沢キツツキの音かろやかに春の尾根振り仰ぎなお余りある滝頭鳥鳴かず梢も揺れず滝の音炎天に深く切れ込む山の襞 |
海 沢 |
三つ釜の滝に陰なすヤマボウシ木洩れ日の射すや並走ねじれ滝岩陰の噴霧や滝のほとばしり人に似て逆さ吊りなる不動滝樋なれど岩茸石の滝涸れず |
川乗谷 |
滝たぎる白き炎の巌(いわ)の穴 |
カロー谷 |
行き着いて仰ぐ大滝青天井滝壷に馬蹄の虹や真昼どき美味し葉に子鹿そろそろ崖の縁 |
峰谷川 |
モモンガのカヤの木の穴冬日和ぴゅぴゅぴゅぴゅぴゅ〜リス枝駆ける冬木立 |
後山川 |
晩秋の鉱泉宿の軒の星 |
おいらん淵 |
伝説の悲鳴かすかに滝の音 |
大黒茂谷 |
手すさびの神の階段(きざはし)滝下る |
北秋川 |
崖広く翡翠(ひすい)の空に冬の滝……………………………………滝奥の枯薮透けて日の一輪 |
「渓相」という言葉は辞書には載っておりません。
名づけた当初は造語のつもりでしたが、
渓流釣りをする人や谷の遡行者の間で使われています。
布 滝 聖 滝
(入川谷・布滝沢) (日原川・川乗谷)
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一つの谷をさかのぼってみます。句はメモのようなものです。
とはいえ、汗はしたたり落ちる!
この谷には、奥多摩湖の奥の山梨県の丹波山村から北へ、
奥秩父の山のほうに向かって入ります。