メジロと寒桜





はじめに
(基本の考え)
8.『若草物語』

7.『ウサギの日々』
6.『お星さまのレール』
5.『もしドラ』
4.『十五少年漂流記』
3.『走れメロス』
  2.『DIVE !! 』
 1.『東京ドーム 奇跡のエアー作戦』  
0.『カンナと十二支』(参考例)

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はじめに − 読書感想文についての基本の考え

(「小学生の作文と国語」からの転載)

「道場日記抄」Aug.26〜30 '04 より

 夏休みに入ると、それも後半になると、当ホームページへのアクセス数がぐんと増える。ふだんは1日100〜150くらいなのだが、8月も下旬になると、300〜400にもなる。きっと、作文の宿題で困っている人が多いのだろう。実際、作文についての問い合わせが多く、読書感想文についての相談も多い。

 読書感想文は、あらすじ・あらましを書き、印象に残ったこと・興味をもった部分について書けばよいのだが、これが二つの点でなかなか難しい。一つは、あらすじ・あらましがまとまらないこと、もう一つは、感想が浮かんでこないことである。

 あらすじのまとめ方は、一般的には「こんな話なんだよ」と、人に話して聞かせる調子でよいのだが、難しいのは、コンクールで入賞でもねらうつもりなら、それが感想部分の位置を示すために必要十分なものでなければならないことである。

 もう一つの「感想」については、実はこれは、難しいというより、生徒には酷なのである。読後に「どうだった?」と聞いても、「おもしろかった」 か、「つまらなかった」というのが関の山であろう。それ以上に「もっと何かを感じろ」と強いられでもすれば、これは生徒には拷問にも等しい。
 読書家と言われる人でも、読後の感想はたいてい一言なのである。

 感想文といえば、「あらすじを書くな」という指導者もいるようだ。「すじを書いて字数を稼ごうとするな。感想を書け。自分の考えを書け」ということのようだが、これは極めて危険な指導法である。どんな話のどの部分について書いているのかが分からなければ、せっかくの考えも「木を見て森を見ず」ということになりかねないからである。

 これとは逆に、「あらすじをしっかり書きなさい」という指導があってもよいのではないか。一部を取り上げてあれこれ理屈をこねるよりも、一遍の物語のすじをしっかりつかむほうが、どれだけ読書の収穫が得られることか。
 実際、すじさえしっかりつかめば、感想は自ずと出てくるもので、うまくすれば、それが主題に関わるものである場合もある。

 それほどでなくても、あらすじをしっかり書いた上で、最後にひとこと「○○が〜〜したところがおもしろかった」とでも書き添えれば、それで立派な感想文になろう。中味をしっかりつかんだという収穫があれば、たとえコンクールで入賞しなくても、それでよいのではないか。
        …………………………………………

追記; 「感想のない読書感想文」もある。こちらの「命のバトン」へ。


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ごく普通の、ポピュラーな物語の感想文を紹介しよう。

『若草物語』

埼玉県 小5 陶子

 わたしはこの夏休みに『若草物語』を読みました。姉がこの本を持っていて、すすめられたのがきっかけでした。
 この物語の舞台は、南北戦争が起きたころのアメリカです。メグ、ジョー、べス、エイミーの四姉妹が、喜びや悲しみなどを経験した1年間のお話です。4人にはそれぞれ夢がありました。メグはお金持ちに、ジョーは作家に、また、べスは幸せに、エイミーは画家になりたいという夢でした。ジョーとエイミーがけんかをしたり、べスが病気になったり、いろいろな事件が起こります。その中で興味深いのは次女のジョーの行動です。ジョーはものごとに熱心で、前向きです。
 妹のべスがしょうこう熱という病気にかかったことがありました。べスの病気はどんどんひどくなって、ずっと寝たきりになってしまいました。その時にジョーが付ききりでべスを見守りました。やがて熱が下がり、べスはすっかり元気になりました。
 ジョーは本が大好きで、自分でも物語を書きます。ある時、書き上げた物語を、家族にないしょで新聞社に持って行きました。ないしょにしたのは、新聞に物語が載らなかった時に、家族を悲しませたくなかったからです。でも、その物語は2週間後に新聞に載りました。そのことを家族に話すと、みんな涙を流して喜んでくれました。
 お父さんが戦争から帰ってきて、重い病気になり、入院しました。家にはあまりお金がないと思い、ジョーはとこやさんに行って、長かったくり色の髪を男の子みたいに短く切ってもらいました。切った髪の毛を売って、そのお金をお母さんに渡しました。
 大事な髪を切るのは勇気のいることだし、看病をするのは我慢のいることだと思います。ジョーは意地っ張りなところもあるけれど、思い切りがよくて、思いやりもあります。
 この本を読んで、兄弟姉妹のあり方について、教えられることがたくさんありました。また、テレビやゲームのないころの4人姉妹は毎日が幸せそうだなと思いました。編み物をしたり絵を描いたりして、楽しそうに生活しているのを読んで、うらやましくなりました。この物語は、人々に幸せをくれるお話です。

この感想文のよさはどこにあるのだろうか。
それは、本全体について紹介した後、
気に入った場面を抜き出しているところにある。
(この感想文では、看病、物語の投稿、髪切りの3点)。
いちいち感想を添えなくても、抜き出し方が一つの感想になっている。
その3点をまとめているのが、終わりから2段落目。
また、おしまいの段落が全体についての感想となっている。


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2000字程度の感想文を求められたら、どうすればよいだろうか。
そのような場合の例を紹介しよう。

『ウサギの日々』

愛知県 中1 一輝

読みやすくするため、まとまりごとに間を空けてある。

 この物語は、ヒロシという中1の少年がサッカー部でいじめのようなしごきにも堪え、レギュラーに選ばれる話です。我慢することの大切さのほか、思いやりが感動を呼ぶ場面もあります。

 ヒロシは入部した日から、怖い3年の先輩たちに毎日ウサギ跳びをやらされます。このため、最初にいた1年生部員35人も、期末試験の後には12人にまで減ってしまいました。特に1年生にウサギ跳びをやらせるのは、部内で一番へたな3年の青田でした。青田は練習中に自分がドリブルやパスのミスをすると、ベンチに向かって「声が出とらんど。ウサギじゃ」というふうなのです。
 ぼくは、ヒロシたち12人は部活の練習にほんとうに堪えたんだなと思いました。それは、青田がほぼ毎日、自分がミスをするとすべて1年生のせいにして、ウサギ跳びをさせたり、尻を思いっきり蹴ったりするからです。ぼくなら、そんなにウサギ跳びばかりさせられるなら、すぐサッカー部をやめるけどなと思いました。ぼくはバスケットボール部に入って筋肉痛になったことがあるので、つらさは少しわかります。

 5月の市大会で、青田のミスで負けてから、青田は部員からどう思われているか気にするようになり、3年生とは目を合わさず、2年生からの視線を気にするようになります。さらに、青田を苦しめるかのように、8月から秋山という実業団OBがサッカー部のコーチに就任します。コーチが入ってから、1年生は3年生と同等の扱いを受けることになりました。コーチは最初のうち、パスミスをしたりディフェンスが遅れたりする青田を怒鳴りましたが、8月半ばを過ぎた頃から怒鳴ることをやめてしまいました。青田は見限られてしまったのです。コーチは9月の市大会のメンバー発表で、3年生を全員呼びました。2年生も数人呼ばれ、1年からはヒロシだけ呼ばれました。ヒロシの背番号は青田がつけていた2番でした。
 ぼくが最も感動した場面は、ヒロシが青田のことを思って、ユニフォームを取り替えてほしいとコーチに言いに行くところです。

 9月の市大会1回戦の日がやってきました。その日の朝、ヒロシはコーチに、背番号を青田のと取り替えてくれるよう頼みに行きます。しかし、コーチはなかなか許しません。ヒロシはとうとうコーチの車の上にユニフォームを放って会場に入ってしまいます。これに怒ったキャプテンの石塚がヒロシの顔をなぐります。ヒロシはじっとそれに堪えます。
 ヒロシがわざわざコーチの所へ行ってユニフォームを替えてほしいと頼んだとき、ぼくは、「はあ、なんでへたな青田のために頼んだんだ」と、思わず声に出して言ってしまいました。同時に、ヒロシは思いやりがあるなと思いました。

 試合はPK戦になりました。しかし、PK戦も同点で、サドンデスになりました。コーチはヒロシに打たせることにしました。ヒロシはこのシュートを決めます。これによって、ヒロシはみんなからレギュラーであることを認められます。
 周りの人がサッカー部をやめても、ヒロシはレギュラーの座を目指してがんばり続けました。どんなに膝が痛んでも、一生懸命跳び続けたのは、サッカーへの思いが強かったからでしょう。それが大事なところでの決定的なシュートになったのだなと思いました。

 ぼくとヒロシには共通点が1つあります。ヒロシは、途中で退部した人にサッカー部はつらいとか、やめてオレといっしょの部に入ったらどうだとか言われると、逆にやめませんでした。ぼくは、仮入部1日目でバスケットボール部をやめた親友に、他の部に入ったほうがいいんじゃないかと言われました。その時は、お前みたいに逃げたくないと言って、他の部には移りませんでした。どっちも、意地でもやめないところが似ていると思います。
 この本を読んで、ぼくの部活の参考になったことが1つあります。それは、何でもあきらめたらダメだということです。これはまた、部活だけではなく、勉強でも言えることだと思います。中学校の授業はどんどん難しくなってきています。それでもあきらめずに少しずつ前進していくことが大切だと思います。

                       (以上、約1800字)

読書感想文の基本の形は「あらすじ+感想」だが、
2000字ともなると、
あらすじが半分としても、長くなりすぎて冗長になりかねない。

この感想文は、物語の概要を紹介した後、
あらすじと感想、あらすじと感想、……、……を繰り返し、
感想で締めくくるという構成になっている。

このため、何についての感想かがはっきりし、
すじを追ってメリハリのある展開となっている。

この構成で注意しなければならないのは、
あらすじ部分と感想部分を段落できっぱりと分けることである。



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『お星さまのレール』

東京都 小5 笑(えみ)

「作文ワールドⅡ」…「笑ちゃん」のページの「⑦『いのち』」へ。
こちら

笑ちゃんには「感想のない読書感想文」もある。
同ページの『命のバトン』へ。


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今年の甲子園出場校の中にも、こんなマネジャーがいるかもしれない。


『もしドラ』

東京都 小6 三鈴

 母からこの本のことを聞いたときは、半分「これって大人の読む本だから、難しいんじゃないの」と思っていました。しかし、私は小さい時からマネジメントのようなまとめる力を持つ人にあこがれていて、「読みたい」という思いがありました。母に「読んでみれば、」と、すすめられたのでこれをきっかけに読んでみることにしました。
 この本の正式な題名は、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、といいます。主人公は川島みなみという、ごくふつうの高校生です。このみなみが強くも弱くもない野球部のマネージャーになり、ピーター・ドラッカーの『マネジメント』を読みます。それで野球部を変えて、甲子園に連れて行こう、という話です。この本にはマネジメントの3つの役割が書かれています。
 1.マネジメントは、組織の目的を果たすために存在する。
 2.仕事を通じて、働く人たちの強みを生かす。
 3.組織が社会に貢献する。
 みなみはこれをもとに部員を鍛えていきます。
 私がこの本の中で特におもしろいと思ったのは、野球部員の一人で、マネージャーの一人でもある二階まさよしが、夏の大会でキャプテンになったところです。私は、キャプテンというのはたいてい野球部の中で一番強い人がなるものと思っていました。ところが、この二階くんは野球がものすごく下手で、キャッチボールでさえまともにできないくらいでした。みなみは、レギュラーになりたいという夢を捨ててマネージャーとして働いている二階くんを見て、だれもが認めるような身分が保証されている形でベンチに入ってほしいと思ったのです。私はこの場面を読んで、自分だけの夢を捨て、チームへの夢に変える二階くんもすごいけど、その二階くんを見てきたみなみが、だれも思いつかないような発想で、二階くんを指名したのがすごいと思いました。これこそが「人の強みを生かす」という真のマネジメントなのかなと思いました。

 この本にはいろいろなヒントがあります。私の場合、例えば学級での話し合いの仕方が変わりました。司会をするとき、以前は手を挙げた人だけから意見を聞いていましたが、今は、「○○さんはどう思いますか」と指名して、ふだんは意見を言わない人からも意見を聞くようにしています。すると、いろいろな意見が出て、それぞれについて話し合うと、みんなの意見がまとまりやすくなりました。
 この本は、きっといろいろなところで役に立つと思います。

                       (以上、約1100字)


本を読んで、「ああ、おもしろかった」で終わっていないところが頼もしい。
読書が生きている。


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ユニークな感想文を紹介しよう。


『十五少年漂流記』

東京都 中1 晃輔
 ニュージーランドの寮に入っている少年たちが、港につないであった船に乗って遊んでいるとき、ジャックという少年がいたずらでとも綱を解いてしまう。船は沖に流されていって、嵐に巻き込まれ漂流する。100トンほどのその船には14才から8才までの15人の少年が乗っていた。船はやがてある海岸に流れ着く。少年たちはそこが無人島であることを知って、そこで生活する決心をする。最年長の14才のゴードンを大統領に選んで、仕事の分担を決め、力を合わせて生活を始めた。ゴードンはただ一人のアメリカ人で、メンバーはイギリス人が11人、フランス人が2人、それに、黒人の男の子が1人だった。15人の少年たちは、時々けんかをしたり、殺人者が流れ着いて怖いめにあったりしながらも、楽しく暮らし、2年後に無事にニュージーランドに帰った。

 もし、僕がこの少年たちのように、無人島に流れ着いたらどうするだろうか。僕は登場人物の一人になって考えてみました。
 共同生活をするために、少年たちは仕事の係を決めます。そういうときには僕はどんな仕事が似合うだろうか、考えてみると、大統領になってみんなをまとめる仕事は一番似合いません。分担する仕事には日記をつける係、見張りをする係、森で狩りをする係、魚をとる係、勉強を教える係、食事を作る係などがありますが、どれも僕にはできそうにありません。しかし、こんな何かを引き受けなければなりません。そうすると、一番できそうなのは食事の係です。でも、僕は家でも食事を作ったことがなく、せいぜいインスタントラーメンにお湯をかけて作ることぐらいしかできません。だから、実際に島で生活することになったら、食事作りは黒人でコックのモーコーに任せきりになってしまうでしょう。そうなると、食事の係で僕にできるのは、できた料理を運ぶことぐらいです。しかし、それではみんなにばかにされるし、自分がみじめになるので、少しずつ料理をならおうという気持ちになるでしょう。モーコーが野菜をきざんだり、肉を焼いたりするのを見て、野菜や肉を切ることから始めるかもしれません。そう考えていると、実際に僕にも料理ができるような気がしてきます。でも、僕の作った料理はおそらくまずいでしょう。みんなに文句をいわれるかもしれません。そうなると、もっとみじめだから、僕は味付けの研究を始めるでしょう。
 そのために、僕は浜辺で塩を作り、スパイスを探しに森へ入り込みます。一度決めたら、僕はやりとげないち気が済まないほうだから、とことん研究を進めます。そして、ある晩、すばらしい夢をみます。苦味のない、、さらさらの食塩と、ピリッと辛いが香りの高いスパイスができ上がったのです。目が覚めると、確かにできそうな勇気がわいてきて、その日からまた研究を重ねていきます。そして、ついにそのとおりの食塩とスパイスができて、みんなに大喜びされ、尊敬されるようになります。みんなはもうこの島をはなれたくないというほどのおいしさです。悪人たちも一口食べると、たちまち心が改まって、毎日こんな食事がしたいといって、僕の言うことを聞くようになります。僕が「では、もっといろいろな食材を集めて来なさい」と言うと、「はぁい」と言って、毎日海にもぐったり、森の中に入り込んだりしては、両手にかかえきれないほどの貝や魚、けものの肉を持ち帰ってきます。こうして、15人の少年たちと悪人の一味は、それまで味わったことのない豊かな生活をするようになります。

 『十五少年漂流記』は、こんなふうに想像の世界を広げてくれました。今では、その少年たちの仲間の1人になったような気がします。

                    (以上、約1500字)


「もしも自分が少年たちと同じように、無人島に漂着したとしたら」
と考えることによって
晃輔くんは物語の中へ入り込んでいったようだ。
それによって、読みがいっそう深まったと考えられる。


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 太宰治の『走れメロス』は、中2になるとどの教科書にも登場するが、
翼くんは一足先に文庫本を買ってきて読んだ。

『走れメロス』

 さいたま市  中1 翼
 メロスは、たった一人の妹の結婚準備のための買い物をしに、シラクスの町へやってきた。旧友のセリヌンティウスを訪ねるため、町を歩いていると、町の通りがひっそりしているのに気がついた。老人にわけを聞くと、小さい声で「王様は人を殺します。人を信じることができなくて、初めに家族を、次に家来を、そして、町の人を殺しました。今日は6人殺されました」と教えてくれた。それを聞いて、メロスは激怒して、すぐに城へ入っていった。
 メロスはたちまち捕まって王様の前に引き出された。王様に用を聞かれて、「町を暴君から救うためだ」と答えると、王様は「今にはりつけにしてやる」と言った。メロスは「その覚悟はある。ただ、妹の結婚式を見たいから、三日待ってくれ。その間、この町のセリヌンティウスを人質として置いておく」と王様に約束した。二年ぶりにセリヌンティウスと再会してわけを話し、メロスは十里の道を走って村に帰った。妹と花婿を説得して、翌日式を挙げさせ、次の日の朝早く町に向かって走り始めた。しかし、川にさしかかると、昨日の式の途中から降りだした大雨のせいで、橋が木端微塵に跳ね飛ばしていた。メロスはやむを得ず、濁流に飛び込んだ。どうにか向こう岸に着いたが、峠を上りきった所で山賊が現れた。山賊は王様の命令で待ち伏せしていたのだ。メロスは山賊の棍棒を奪って三人を倒し、一気に峠を駆け下りた。ところが、体力が限界となり、その場に倒れてしまった。まどろんでいると、もうあきらめようかという気持ちになった。しかし、足元に流れる水音に目が覚め、それを飲むと元気が回復し、メロスは再び走り出した。
 刑場ではセリヌンティウスが絞首台の上でつり上げられるところだった。メロスはそこに走り込んで叫んだが、声が出なかった。ようやくセリヌンティウスの足にかじりつくと、人々はどよめいた。そして、セリヌンティウスの縄はほどかれた。メロスはセリヌンティウスに「私を殴れ。私は途中で悪い夢を見た。君が私を殴ってくれないと、友の資格はない」と言った。セリヌンティウスは思い切り殴って「私も一度君を疑った。殴ってほしい」と言った。メロスも思い切り殴った。それを見た王様は、人を信じることの大切が分かって「自分を仲間に入れてほしい」と言った。

 この話を読んで、一番印象的だったのは、メロスがとても純粋なことです。王様が悪いと知ると、激怒して、すぐにお城へ入っていきます。また、町へもどる途中、眠りかけて一瞬約束を破ろうとしますが、そのことを正直に白状します。
 お城へ入っていったことについて、ふつうの人なら王様を恐れてそんなことはしません。でも、メロスにとっては自分が死ぬことよりも、正義のほうが大切なのでしょう。
 自分が約束を破ろうとしたことについても、黙っていれば分からないのに、正直にセリヌンティウスに話し、その罪滅ぼしのために自分を殴れと言います。それを聞いてセリヌンティウスも、メロスはもどってこないのではないかと一度疑ったと白状します。
 この本を読んで、自分が正直であれば相手も正直になり、それによって互いの信頼関係がますます強くなるということが分かりました。悔いのない生き方をするには正直が一番だということも分かりました。

                        (以上、約1200字)

 翼くんは正直に感想を述べている。
話の筋をしっかりつかめば、感想は素直に出てくるという例である。

 なお、この感想文で注目したいのは、
あらすじ部分と感想部分が、
それぞれ常体と敬体できちんと仕分けられていることである。

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2.『DIVE !!』

東京都 小5 高橋 海

 「DIVE !! 」(ダイブ)という本は沖津飛沫(おきつ しぶき)、富士谷要一(ふじたに よういち)、坂井知季(さかい ともき)という三人が中心となってくり広げられる高飛び込みの話です。主人公の知季は高飛び込みをしている中2の男子です。飛び込みはあまりうまくなかったけれど、謎のコーチ麻木夏陽子(なつき かよこ)の出現で、みんなといっしょにオリンピックを目指すことになります。飛沫、要一といっしょにさまざまな試練を乗り越え、オリンピック選考会で選手に選ばれます。
 ぼくがこの話で一番心に残ったのは、一番最後のところです。「FINALSTAGEYOICHI」では、要一は熱があるにもかかわらず、難易率 2.9の「前逆宙返り二回半蝦型」を完璧に回りきって、90度の角度で入水を決めます。結果は600.09点で、そこで力が尽き果てます。
 「FINAL STAGE SHIBUKI」では、飛沫は難易率 1.9の、ただ飛ぶだけの「スワンダイブ」で、のびやかなカーブを描きながら急降下して、シュッと、ノースプラッシュ特有の音をたてて水を切ります。結果は要一と同じ、600.09点でした。
 「FINAL STAGE TOMOKI」では、知季は死にもの狂いで練習をした「前宙返り四回半抱え型」で臨みます。自分には要一のような実力も、飛沫のような個性もないけれど、何もないからこそ身軽で、どこまでだって飛んでいけそうな気がするのです。知季はいつも枠を越えたいと言っていました。大人が作った枠の中から飛び込みで越えて、自分にしか見ることのできない風景をつかみたいと思っていました。そのための飛び込みで、四回半なのです。知季は軽やかに台を蹴り、未来へと飛び込みます。一回半、ダイヤモンドの瞳にスタンドのみんなが映り、二回半、救護室でのびているはずの要一が映り、三回半、家で吉報を待ちわびている両親が映りました。そして、四回半、だれも知らない、知季だけの新しい風景が、そのとき、透きとおった枠の向こうにきらりとひらめきました。結果は要一や飛沫より高得点で、オリンピックに行くことになりました。
 この本は一巻〜四巻まであり、読んでいてとてもはらはらし、最後に大きな感動が待っています。

                         (以上、約950字)


 初めに四巻という長編の内容を簡単に示し、
次にクライマックスの場面を手際よく紹介している。
特に感想は述べていないが、その場面が一番おもしろいと言うことによって、
本の紹介が自然に感想文になっている。

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1.『東京ドーム 奇跡のエアー作戦』

 神奈川県 小5 直宏

 ぼくは、野球観戦のために数回東京ドームに行ったことがある。初めて目の前で東京ドームを見た時、「大き〜い」と思った。ドームの中に入った時は「広〜い!あの大きな屋根が空気でふくらんでいるなんて、すごいなあ!」と思った。
 『プロジェクトX挑戦者たち』という本の中に「東京ドーム 奇跡のエアー作戦」という題のあるのを見つけて、興味をもったので読んでみた。
 東京ドームのテントの素材はシィアフィル2というものだ。強度が高く、七百度の熱に耐えられ、透光性がいい。でもアメリカから仕入れたシィアフィル2のロール一本ごとに生地の伸び率がばらばらだった。太陽工業(テント2)の社員はできるだけ伸び率が似た生地を貼り合わせればしわにならないはずだと考えて、何日も徹夜をして裁断図を作った。
 建設会社竹中工務店の社員も大変な苦労があった。日照権の問題でドームの屋根を斜めにしなくてはいけないこと、東京ドームより先に作ったドームの膜屋根を空気でふくらませる途中、ケーブルとシィアフィル2の膜の一部をかみ込んでしまい、途中で屋根がふくらまなくなってしまったこと等だ。
 これらの問題を解決するために竹中工務店の社員はそのかみ込む所のビデオをくり返しくり返し見て原因を突き止めていった。
 とうとう、空気を送り込んでドームをふくらます日がきた。太陽工業で働いている斉藤さんの父はガンと闘っていた。太陽工業の能村社長は斉藤さんのお父さんと、ドームからはなれたビルの屋上でふくらまし作業を見守っていた。だが、ドームの中ではふくらます途中で異様な金属音がひびきだし、屋根の上に乗っていた竹中工務店の社員たちはその時心配したが、無事成功した。みんな大喜びだった。
 ぼくが太陽工業や竹中工務店の社員だったら、この人たちと同じように、完成するまでがんばりたい。ぼくは、一回やろうと思ったことは完成するまでやらないと気が済まないからだ。
 ぼくは、能村社長が社員に言った「志ある者には事遂に成る」という言葉を辞書で調べた。確固たる志を持つ者は、どんな困難にそうぐうしてもくじけることがないから、いつか必ず事を成し遂げることができる、と書いてあった。ぼくはこの言葉で、くじけないようにがんばる人になりたいと思った。

                        (以上、約1000字)

 東京ドームへ行ったことがあるという体験から始めているのがユニークだ。
感想を後ろにまとめているのがよい。
 あとはどこをどう直せばよいだろうか。いっそう「光る」文章にしてみよう。

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0.『カンナと十二支』

読書感想文というものについて一考を要する一例を
参考までに紹介しよう。


東京都 小4 わかば

 『カンナと十二支』は、かんたんに言うと、「ある日、地球の平和を守る仙人様が眠ったすきに悪魔が飛来してきて、人々をつかまえてどれいにしたり、動物たちを平気できずつけて殺したりした。悪魔たちのやりたいほうだいだった。そこで、カンナという女の子と十二支の動物たちが、人々をたすけるためにぼうけんをし、悪魔を追いはらって地球に平和がよみがえる」というお話だ。
 私が第一に思ったのは「作者がなぜ、この物語を書いたのか」ということだ。それを知りたかったから、あとがきの部分を先に読んだ。私は『星の王子さま』のように、だれかにプレゼントするために書いたのかと思っていた。ところが、作者はこう書いている。「ねずみから始まりいのししで終わる十二支の動物たちを誰が決めたのか。なぜ、他の動物が入っていないのか。十二支の動物たちの役目は何なのか。なぜ、ねずみが一番でいのししが最後なのか。………」そんなことを考えている間にこの本が生まれたらしい。本は人間を楽しませるためにあると思っていたけど、この本は「ぎもん」から生まれたのだ。かわいい十二支たちが出てくるおもしろい作品だ。
 おもしろかったのは、悪魔がカンナたちにおそいかかろうとした時、ニワトリさんたちが「コケ−、コケコッコー」と鳴いたら、悪魔たちが急いで去っていったところだ。カンナが、なぜ急いで去っていったのかを聞くと、悪魔たちは、太陽の光がきらいで、太陽の光がさしてくると思ってにげていったんだと言った。本の中のカンナも、私も大笑いした。
 なぜ、ねずみが一番で、いのししが十二番かというと、「ある日、神様が運動会を開いて、一位から十二位までの動物を十二支にしました」ということだ。これは私が思ったことだが、作者もそう言っている。私はそのほかにも、なぜ、ねこやたぬきなどが入らないのかと思ったが、これはねこやたぬきは十三位以下だったのだろう。それとも、運動会の日にねぼうしたのだろうか。そんなことが書いてあった本もあったように思う。
 話もおもしろかったが、いろいろ考えることができて楽しかった。

                           (以上、約900字)

 「あとがき」から読んだというのがユニークだ、読み方にもいろいろあるな、
それにしても、まともではないな、と思っていたところ、
小3の子が同じように
「なぜ作者がこの物語を書いたのか考えると、……」とやっている。
その子のお母さんに聞いてみると、
「塾で、主題をつかみなさい。作者はどういう考えで
この物語を書いたのかを考えるように、と言われている」
ということであった。

 これで合点がいったわけだが、これは無茶だ。
作家を研究する人や文芸評論家なら、こんな読み方をするかもしれないが、
当人たちは小学生で、しかも、3、4年生なのだ。
読書の楽しみがどこかへ行ってしまっている。
 もしかして、こんなことを指導するマニュアルがあるのかもしれないが、
まず、素直に読んでみる、そんな読書指導にしたいものだ。

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冒頭にも書いたことだが、
 夏休みも終わりごろになると、このホームページへのアクセス数はぐんと跳ね上がる。
多くの人が作文や、この感想文のサイトを訪れているようだ。
大いに参考にしてほしい。

しかし、時間がないからといって、丸写しするのだけは止めよう。

筋をしっかりつかみさえすれば、感想は自然に出てくるものだ。
それは、他のだれのものでもない、君自身の感想なのだ。

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チョウチョとキク