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作文ワールドⅥ 七五の四行詩 |
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総もくじ
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○ はじめに 1−1.『ハト』『くりくり』 − 理咲ちゃん(小5) −2.『マスつりバーベキュー』 −3.『江戸東京博物館』 2.『にじ』 − 宙ちゃん(小3) 3.『』 4.『』 |
○ はじめに
当道場では作文を添削して、たいていは書き直しを指示する。
二度三度書き直す場合もあるが、一度で仕上がった場合、手持ち無沙汰になる諸君がいる。
そんな時には誤文訂正などのワークを与えたり、
書いた作文をもとに「七五(しちご)の四行詩」づくりを勧めたりしている。
詩作の効用は何より、言葉選びを通じて言語感覚が磨かれることにある。
その意味では俳句や短歌、あるいは川柳でもよいのだが、
短詩は難しく別途の指導が必要と思われる。
この点で、四行詩は長さの面からも比較的取り組みやすい。
かと言って、自由詩では行を変えればよいといったふうに、内容や構成が安易に流れやすい。
その点、七五ないし五七の詩はリズムがあり、作品に緊密感を生み出してもいる。
この四行詩に最も興味を示しているのが理咲ちゃんである。
既に一部を「道場日記抄」(Sept.25 '05)で紹介済みであるが、その再録から始めよう。
他の生徒の作品については、「作文ワールド」へ。
なお「七・五の四行詩」は明治時代に始まった新体詩を手本にしている。
新体詩は上田敏の『海潮音』や島崎藤村の『若菜集』などに見られる。
1−1.『ハト』『くりくり』−(小5 広瀬理咲)
<「道場日記抄」(Sept.25 '05)>より
ある日のこと、理咲ちゃんが「何を書こうかなぁ」と案じている。
「井の頭公園へ散歩に行ったの。そうしたら、ハトがいて、
鳴き声がわたしにそっくりだって、お母さんが言うの」
「それ、おもしろそうだね」、
「じゃぁ、これにする」。
「ハトは、クゥクゥクゥと鳴くんだよね」と言って書き始めたとき、
ふと思いついて「詩にしてみたら」と勧めると、「やってみる」。
あれこれ言葉をやりくりし、時にはヒントを得て、次のような詩ができた。
ハト ハトが鳴いてる クゥクゥクゥ わたしの声に そっくりだ ここは公園 井の頭 母さん笑う クックックッ |
これには伏線がある。
その2か月くらい前のことだ。理咲ちゃんは「選ばれなかった『詩』」という作文を書いた。
学校の山荘へ野外観察に行ったときのことをもとに、次のような詩を書いたのだが、
いっしょうけんめい書いたのに学級の発表会で選ばれず、くやしかったという。
くりくり くりを見つけたよ くりくり トゲトゲがいっぱいあった いたかった だけど、小さなくりが三つもあったよ くりくり かわいい赤ちゃん くりくり トゲトゲに守られている |
なかなか着想がおもしろい。
これを七五(しちご)のリズムで整えれば、もっとおもしろいものになるだろう。
そこで、七五の詩の手ほどきをする。
出だしを作って見せると、けっこう後を続ける。筆が止まるとヒントを出して、次の詩ができた。
くりくり くりくりくりを 見つけたよ くりくりトゲが たくさんだ いたかったけど 取り出した 小さなくりを 三つもね くりくりくりが 赤ちゃんで くりくりトゲが お母さん 母さんトゲを さか立てて くりくり赤ちゃん 守ってる |
4行で終われば「七五の絶句」というところであろうが、8行で「七五の律詩」になってしまった。
それはともかく、詩作は久しぶりのことである。ふだん、多くの諸君の作文は、そこまで手がまわらない。
だが、こうしてできたのを見ていると、改めてみんなに勧めてみようとも思う。
1−2.『ますつりバーベキュー』−(小5 広瀬理咲)
「七五の四行詩」はふつう、書いた作文をもとにして作る。
ここでは添削作文と、出来上がった詩を紹介することにしよう。
はじめの作文 | 添削例 |
私は5月13日(土)に、神奈川県の早戸川でますをつってバーベキューをしました。行った人は、広瀬家全員と、お父さんの友達の井口さんと、そのむすめのちひろちゃんと行きました。 まず、ついてからすぐに、つりをしました。はじめはたくさんつれましたが、1時間くらいすると、ますもりこうになってしまって、いくらやっても、えさだけ食べられるばかりでした。みんなしかたなしに休けいしてから、もう1回することにしました。 まず、つったますを塩焼きにして食べました。それから、井口さんがムニエルを作って、みんなで食べました。私は、とてもおいしかったので、全部きれいに食べました。すると、おじいちゃんが 「おっ、りさは、食べるのきれいだね」 と、ほめてくれました。私はうれしくなりました。 次に、野菜や肉を焼きました。野菜はいつもと同じ味に感じましたが、肉は焼肉屋でたべるよりも、とてもおいしく感じました。 次は、もう一度つりに行きました。でも、1ぴきもつれません。すると、お母さんが1ぴきつりかけました。でも、はりをとったしゅんかんにげられました。私は魚にばかにされてるみたいでくやしかったです。 最後に、えさのいくらを川に全部なげ入れてから帰りました。とても楽しくくやしいバーベキューでした。 |
※ 広瀬家のメンバーを紹介しておこう。 ← ちひろちゃんです。 ※「まず」「次に」という順序になるといいのだが、これらはなくても話は進むから、削除しよう。 ← しかたがないので、休けいしてから…… ※ どこで食べたのかな。 ← とてもおいしかったので、私は全部…… ← ……よりもずっとおいしく ← 食べた後、もう一度…… ← ……つれませんでしたが、お母さんが…… |
「おもしろい話だね。中身もいっぱいあるから、四行詩にするといいかもしれない」と言うと
、理咲ちゃんはにっこり笑って、書き直しにも精を出す。
書き直した作文 | 添削例 |
私は5月13日(土)に家族で神奈川県津久井町の早戸川へ行って、ますをつってバーベキューをしました。いっしょに行ったのは、おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さん、それに、お父さんの友達の井口さんとそのむすめのちひろちゃんです。 着いてすぐに、つりをしました。始めはたくさんつれましたが、1時間くらいすると、ますもりこうになってしまって、いくらやっても、えさだけ食べられるばかりでした。しかたがないので、休けいしてからもう1回つることにしました。 テント小屋で、つったますを塩焼きにして食べました。それから、井口さんがムニエルを作ってくれて、みんなで食べました。とてもおいしかったので、私は全部きれいに食べました。すると、おじいちゃんが 「おっ、りさは、食べるのきれいだね」と、ほめてくれました。私はうれしくなりました。 そのあと、野菜や肉を焼きました。野菜はいつもと同じ味に感じましたが、肉は焼肉屋で食べるよりもずっとおいしく感じました。 食べた後、もう一度つりに行きました。でも、1ぴきもつれませんでした。もうやめようかと思ったとき、お母さんが1ぴきつりかけました。でも、はりをとろうとしたしゅんかんにげられました。私は魚にばかにされてるみたいでくやしかったです。 最後に、えさのいくらを全部川に投げ入れてから帰りました。とても楽しくくやしいバーベキューでした。 |
作文を書き直す間も、理咲ちゃんは指折り数えて口ずさんでいる。
理咲ちゃんは書いては消し書いては消し、リズムを整えながらヒントももらって進めていった。
1時間ほどして次のような作品になった。
ここは津久井の 早戸川 家族みんなで ますつりだ おじさんたちも 加わって たくさんたくさん つり上げた つった魚で バーベキュー 川の近くの テント小屋 ますが10ぴき あみの上 ジュージューけむりが いいにおい パクパクパクと いただいて 野菜も肉も 追加して みんなもりもり よく食べる ムニエルまでも いただいた たくさん食べて もう一度 つりざお入れたが かからない えさのいくらを 投げ捨てて くやしいけれど もう帰る |
詩にしてみると、第2連にあるような新しい場面も生まれてくる。
逆に、これを作文に取り込めば、作文もいっそう印象鮮やかなものになることだろう。