紅白桜


公立中高一貫校入試の作文

— 答案例 —

も く じ

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「東日本大震災」の作文・第1部  第2部・第3部

作文打出の小づち
総もくじ
作文編  国語編  小論文編  閑 話

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も く じ
1.課題だけの問題
  ① 課題文の短いもの
     「勇気」(愛媛県立中共通)
  ② 課題文の比較的長いもの
     「自分をほめたい」(高知県立安芸中)

2.文章読解を伴う問題
  ① 比較的短い文章 : 論説
     「科学技術と社会」(和歌山県立田辺中)
  ② 比較的長い文章 : 小説
     「生き物」(東京都立小石川中)

3.絵や写真を見て答える問題
  ① 絵の例
      「支え合い・助け合い」(広島県立広島中)
  ② 写真の例
     「数字時計と針時計」(東京都立桜修館中)

4.統計資料を見て答える問題
  ① グラフの例
     「食料と私たちの生活」(新潟県立中共通)
  ② 図表の例
     「バイオ燃料」(秋田県立中共通)

5.放送を聞いて答える問題
  ① 比較的短いもの
     「敬語について」(東京都立両国中)
  ② 比較的長いもの
     「生活の知恵」(千葉県立千葉中)

6.複合問題
  ① 文章とグラフ
     「世界を知る・自分を知る」(東京都立立川国際中)
  ② 会話文とグラフ
     「私の県・あなたの県」(埼玉県立伊奈学園中)


1−① 「勇気」 (福岡県 戸成史乃)

問題文はこちらの(1−①)へ。

史乃さんは同じ内容で600字と300字の2種類の作文を書いている。
前者は課題文の指定字数で、後者は自分の受ける学校の制限字数である。

「勇気}(600字)
   添削例・諸注意
 私が、1年生の図工の授業の時のことです。ねん土を使ってうさぎを作っていました。その時、いつも私にいじわるをする友達が、私の作ったうさぎを持ち去っていきました。以前にも、物を取られたり、たたかれたりしていたのですが、言い返してまた何かされるのがこわかったので、ずっとがまんしていました。しかし、私は、
「取らんでよ。早く返してよ」
と、その時初めて勇気を出してその友達に、泣きながらどなりました。うさぎはグチャグチャになって返ってきましたが、どなった後は、私のモヤモヤとした気持ちがスーッとなくなりました。
 今では、その友達に限らず、他の友達に対しても、いやな時はいつでもいやという気持ちを伝えられるようになりました。そのせいか、いじわるな友達も、このごろは物を取ったりたたいたりしません。あの時自分の気持ちを伝えていなかったら、今も物を取られているかもしれません。あの時、勇気を出して言ってよかったと思いました。
 これからも勇気を出して、いろいろな事に挑戦していきたいと思います。また、自分自身のことだけでなく、友達や妹や下級生たちが何かで困っていたら、勇気を出して助けてあげられるようにもなりたいです。
← 私が1年生の……



← 以前にも、私は物をとられたり……




← ……勇気を出して、泣きながらどなりました。






← いじわるだった友達も







← 助けてあげようと思います。 

制限字数は必ずしも毎年同じというわけではない。
だから、他校の問題に触れて、指示どおりの字数で書くのもよい練習になる。
なお、それを志願校の傾向に合わせて書き直すのも忘れてはならない。

「勇気}(300字)
   添削例・諸注意
 私が、1年生の図工の授業の時のことです。いつも私にいじわるをする友達が、私の作ったうさぎを取ってしまいました。以前にも、物を取られたり、たたかれたりしていたのですが、ずっとがまんしていました。しかし、私は、
「取らんでよ。早く返してよ」
と、その時初めて勇気を出して、その友達にどなりました。どなった後は、私のモヤモヤとした気持ちがスーッとなくなりました。
 今では、いやな時はいつでもいやという気持ちを伝えられるようになりました。そのせいか、いじわるだった友達も、このごろは物を取ったりたたいてきたりしません。あの時自分の気持ちを伝えていなかったら、今も物を取られていたと思います。あの時、勇気を出して言ってよかったと思いました。










史乃さんには「天地山公園」という、近所の有名な公園について書いた
1000字ほどの作文がある。
それを「ふるさと自慢」という題で400字に要約するなどしている。

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1−②「自分をほめたい」(大阪府 下田小晴)

問題文はこちらの(1−②)へ。


課題に合う事例を探すのは、
試験になれば、時間との闘いでもある。

「自分で自分をほめたい」 (400字程度)
   添削例・諸注意
 私は今年の運動会の「組み立て体操」で大きく成長したと思います。私は高い所が大の苦手だったのですが、組み立て体操の「二段塔」で私が一番高い所に乗ることになりました。最初の練習のとき、どれだけ「下が安定している」と思っても、私は怖くて立ち上がれませんでした。他の塔がすべて立っているのを見て、私はさらに怖くなってしまいました。「私のせいで全部立てなかったら、どうしよう」という不安も積もってきました。その時、私は別の見方をしてみようと思いました。「二段塔」の上から羽ばたく鳥を想像することにしたのです。
 次の練習のとき、ゆっくりと立ち上がっていきました。「ピー」という笛の合図に合わせて、両手を鳥のつばさのようにのばしました。飛んでいると思うと、怖くなくなりました。「できた!」私は思わず叫びました。このとき私が見た景色はとても美しかったです。私はうれしさのあまり涙がこぼれ落ちました。
 この時の私が「自分で自分をほめたい」自分だと思います。

※ 「私は高い……」で改行する。




← 全部そろわなかったら、
← 不安も高まって

いい事例を思い付いたものだ。
両手を翼のように広げている姿が目に浮かぶ。
………………………………………………………………
なお、問題文の字数指定は「400字程度」となっている。
「程度」という場合は前後1割(360〜440字)が許容範囲のようである。
この作文は400字詰めの用紙で2行オーバーしているが、
許容範囲に収まっていると見てよい。
………………………………………………………………
補足 : 「自分をほめたい」という表現について
、元の問題文では「自分をほめてあげたい」となっているが、
「あげる」というのは敬語で、これを自分に使うのは不適切である。
これについて、有森さんご本人は「そんなことは言わなかった」ということで、
NHKが当時のインタビューをビデオで確かめたところ、
有森さんは「自分をほめたい」とはっきり語っていた。
どこかで、だれかが転写を間違えたのだろう。

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2−① 「科学技術と社会」 (福岡県 戸成史乃)

問題文はこちらの2−①へ

「科学技術と社会」 (600字程度)
添削例・諸注意
 今年の夏休み、私は「地球温暖化によるサンゴしょうへのえいきょう」という題で自由研究をしました。その自由研究では、地球温暖化はなぜ起きるのか、また、その温暖化によってサンゴしょうにどのようなえいきょうがあるのかを調べました。
 その結果、私たち人間が石油や石炭などの化石燃料を使うことによって二酸化炭素を大量に出すようになり、それが急激に増えたため、本来なら二酸化炭素を吸ってくれる海が酸化し、サンゴの白化につながったと分かりました。  二酸化炭素を大量に出しているのは、ほとんどが先進国で、日本もその一つです。
 科学技術の進歩により、私たちの生活は便利になりましたが、サンゴの白化などのように、地球の環境に大きな害を与えているのも事実です。科学技術は地球環境にやさしく、人間と地球の生物との共存に役立つものでなくてはならないと思います。そのためには、科学は二酸化炭素の出ない「クリーンエネルギー」を作ることが大切だと思います。
 私は、人間が自分の利益のためだけに科学技術を発達させるのではなく、地球や世界の人々との共存のために使えば、もっと私たち人間は幸せになると思います。
 









← ……吸ってくれるはずの海が……





← 科学の発達が地球の環境に……与えているのも……(※ 主語を補う)。






← ……使えば、環境がよくなるので、私たち人間はもっと……(※ 「幸せになる」理由を補う)。

新潟県で「ストップ温暖化」と課題が出されている。
この作文の前半はその課題に対して書いたものである。
似たような課題が多いので、ここに紹介したのは、
一つをしっかり書いておけば、応用が利くという例でもある。

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2−②「生き物」(茨城県 吉岡純平)

純平くんは「スポーツ作文」に「なわとび大会」で登場している。
驚異的な記録の持ち主である。

問題文には「問Ⅰ」「問Ⅱ」があるので、両方を紹介しよう。
問題文はこちらの2−②へ。

「生き物」
添削例・諸注意
問Ⅰ(30〜40字)

 現代人には、動物を見て気持ち悪いなどと言って、手をふれたがらない人が多い。

問Ⅱ(500字程度)

 ぼくが3年生のころ、友だちが学校から帰る途中、カナヘビをつかまえてきたので、児童館でカナヘビをきたえることにした。
 児童館にあった積み木で道を作って、そこをカナヘビに走らせたり、カナヘビを積み木で囲んで、どこから逃げ出せるのか実験してみたりした。また、外へいって草や砂、石の上を走らせたり、高い所へ持っていったりした。その時、カナヘビがうんていから落ちて、逃げだした。友だちがつかまえようとして、しっぽをつかんでしまったので、しっぽが切れてしまった。その切れ目からは、しっぽとカナヘビがともに血を流していた。
 ぼくたちはそのカナヘビを持って、児童館へ帰った。ぼくたちのもっていたカナヘビやしっぽに、興味を示す人もいたが、たいていの人は「キモ」とか「ウワ—」、「オエ」などと言っていた。その時、ぼくはカナヘビのことがかわいそうになった。カナヘビは何も悪くなく、しっぽは切れてもまた生えてくるし、あの時はただ逃げようとしただけで、しっぽはたまたま取れただけだったからだ。
 ぼくはこのカナヘビのどこが気持ち悪いのだろうと思った。なぜ人はこういうものを見ると、気持ち悪いというのかなあという疑問もわいてきた。











◎ 「〜たり」の使い方が正確だね。


← ……走らせたり、うんていの上へ持っていったりした。


← しっぽと体の両方から血が流れていた。

ふだんの遊びがこんなところで生きていると言える。
念のため、カナヘビはヘビではなく、トカゲの一種である。

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 3−① 「支え合い・助け合い」(広島県 ST)

S子さんは学校行事や部活動に積極的に参加していて、
作文も運動競技や対外試合についてのものが多かった。
「よく遊び、よく学び」のタイプだが、
公立中高一貫校ではこんな人物が歓迎されるようだ。

問題文はこちらの3−①へ。

「支え合い・助け合い」(300字)
添削例・諸注意
 この絵を見てください。大きな木と、流れている川、かがやいている太陽、根をささえている土があります。その中の木をぼくにたとえて考えてみました。
 まず、川は両親だと思います。植物は水がないとほとんど生きていけません。それと同じように、ぼくの両親は食べ物をくれます。だから、川は両親です。次に、土は友達です。木は土がないと根を支えるものがなくて倒れます。同じように、ぼくが苦しいとき、助けてくれるのは友達だから、土は友達です。最後に、太陽は先生です。いつも上から見ていてくれて、栄養というアドバイスをくれるからです。
 ぼくはぼくを支えてくれる人に感謝します。
              (以上、約300字)






← 両親は栄養をあたえてくれます。





← 光とアドバイスをあたえてくれます。


この問題の場合、自分の周りには、まず家族、
次に友達や近所の人々、そして先生、というふうに考えると、
両親は土、友達は川、先生は太陽、と見ることもできる。
いずれにしても、「そう見る理由」をつける必要がある。

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3−②「数字時計と針時計」(東京都 五十嵐俊介)


この題は任意につけたものであるが、桜修館の問題には
「未来の学校」「水のかたち」など、ユニークなものが多い。
このため、これらの問題に、いろいろな生徒が興味をもって取り組んでいる。
今回の答案はそのうちの一つである。

問題文はこちらの3−②「写真の例」へ。

「数字時計と針時計」(500〜600字)
添削例・諸注意
 ぼくは5才のころ、初めて針の付いている時計を見たとき、針が2の所にきていたので、
「2分だ」
と言ったら、お母さんに笑われました。そして、
「あれは10分と読むんだよ」
と言われました。ぼくは2を10にするなんて、変だなあと思いました。
 また、ぼくが2年生で時計の読み方を習ったとき、お母さんに
「時間の計算をしなさい」
と言われました。その問題は「3時の、1時間30分後は何時何分か」という問題でした。だけど、なかなか解けなくて、時計を見ながら計算しました。ぼくは、時計に針がついているほうが数えやすくていいなあと思いました。
 今、ぼくの家は全部針時計です。ぼくは、針時計の感覚がついているので、縦に一直線になると6時、右に90度になると3時、というように頭の中に入っています。それに、時計の計算をするときは、たいてい針時計を想像して考えます。これから数字だけの時計で生活しようとすると、頭の中が混乱しそうです。数字時計のいいところは、数字がそのまま表示されているので読みやすいことですが、時間の計算のときにはややこしい感じがします。両方とも良いところがあり、両方とも悪いところがあるので、ぼくは両方に慣れるようにしようと思います。

                 (以上、約600字)
← ぼくは5才のころ、時計を見たとき、針が2の所に……























※ 「数字時計のいいところは、……」で改行する。
← 数字がそのまま時刻を表示しているので……

このような、どちらがよいかと問われるような性質の問題の場合、
どっちの立場にたってもよいが、根拠を明確にする必要がある。
そうなると、とかく理屈に陥って、収拾がつかなくなりがちである。
そうならないようにするには、
この作文のように、体験をもとに素直に感想を書けばよい。

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4−① 「食料と私たちの生活」(茨城県 吉岡純平)


問題文はこちらの4−①「グラフの例」へ。

グラフを読むポイントは
目立つところに注目することである。

「食料と私たちの生活」(400字程度)
添削例・諸注意
 今、世界の人口は増えている。そして、今後も増えると予測されている。
 栄養不足に苦しんでいる人たちもいる。その人たちの多くは、アジア、アフリカ、南米などの地域の人たちだ。そんな人たちの数は約8億1500万人いる。これは、世界の人口の約8分の1に達する。つまり、8人に1人が栄養不足ということだ。
 また、日本の食料自給率は50%にも満たない。それに対して、オーストラリアは200%を上回っている。アメリカ、フランスは両国とも安定していて、100%を上回っている。イギリスは、昔は50%を下回っていたが、今は50%を超えている。
 世界の人口が増えているときに、世界の食料自給率が下がったら、栄養不足になる人が増えてしまう。そうなると、日本に食料が回ってこないおそれがある。だから、日本は食料自給率を上げるために、農業や漁業に力を入れなければならない。

              (以上、約400字)




← そんな人たちは約8億……


3つのグラフに目を通して、主要な数値をよく読みとっており、
それを踏まえて、自分なりの考えを明確に述べている。


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4−② 「バイオ燃料」(大阪府 下田小晴)


問題文はこちらの4−②「図表の例」へ。

グラフと同様、図表を読むポイントは
目立つところに注目することである。

「バイオ燃料」(400字程度)
添削例・諸注意
 私はバイオ燃料の導入に賛成です。その理由は2つあります。
 1つ目は、自動車用のバイオ燃料は植物性の物質を利用して作られているからです。植物などの自然なもので作られているので、石油のようになくなってしまっても、もう一度育てればいいので、なくなることはないからです。
 2つ目は、二酸化炭素の排出量がゼロだからです。現在二酸化炭素の排出により地球温暖化などの環境破壊が進んできているので、これを防ぐ方法としてバイオ燃料が役立つからです。
 バイオ燃料の使用によって原料の価格が値上がってしまいますが、少しお金がかかっても私たちの地球や自然、そして私たち自身の生活や命を守ることができるので、バイオ燃料を使用することはとても大切なことだと思います。だから私はバイオ燃料の使用に賛成です。

              (以上、約400字)




← 植物などの自然のものは、石油のように……



← 現在、二酸化炭素の



← 原料の価格が上がって




← だから、私は


理由がはっきり述べられており、構成もよい。
欲を言えば、
数値によって考えの裏付けをしたいところである。

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5−① 「敬語について」(東京都 川崎英佳))

問題文はこちらの5−①「比較的短いもの」へ。

「敬語について」(400字程度…問題3)
添削例・諸注意
(問題1)

① 対話や発表を上手に進め、人間関係をよりよく保とうという意識が働くため。

② 自分と相手との上下関係を明確にし、相手を敬う気持ちを表そうとしているから。

③ 言葉の響きや言葉から受ける印象を大切にしているから。
※ 本文から書き抜けばよい。
(問題2)

 わざわざ使い方の難しい敬語で話す必要はない。心を通わせるためには、やさしい言葉でわかりやすく伝えることが大切だ。
(問題3)

 友だちの家に初めて遊びに行ったとき、私は友だちのお母さんに「こんにちは」とあいさつをした後、「かわさき ひでかです」と言います。同い年くらいの子になら「わたし、ひでか」と言いますが、大人の人に言うときは、何となく「です」をつけています。
 私の母は電話を受けると、「主人が帰りましたら、お電話するよう申し伝えます」と話していることがあります。私はそんな言い方はできないので、「パパが帰ったら、お電話するよう言っておきます」と言います。母はそれを聞いていても何も言いません。この場合は「ます」をつけています。
 「です」「ます」はていねいな言い方ですから、敬語なのだと思います。そう考えると、敬語は別に難しいものではありません。自分が使える言葉でていねいに言えばよいのです。大切なのはエチケットだと思いますから、敬語は相手や場面によって使うべきだと思います。

              (以上、約400字)






← よその人や先生には、何となく




← ……できないので、電話を受けてしまったときは、「パパが……

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輝く梅