7.隆くん作文ワールドⅡ |
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①「きれいなカップ」 ②「ブラックバス」 ③「サイパンの海」 ④「音読の宿題」 ⑤「サッカー・エルビス」 ⑥「五回連続出場をかけて」 ⑦「ホゴ釣り」(1)(2)(3) |
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小学生の作文
公立中高一貫校入試の作文
隆くんは小学4年生。いろいろな活動をしている。愛媛県に住んでいる。
これは、「あんなこと、こんなこと」という体験の中の「きれいだな」という感想に基づいて書かれたものである。
(「あんなこと、こんなこと」についてはこちらへ)。
はじめの作文 | 添削例 |
ぼくは、いごをやっています。ぼくは小学1年生からいごを始めました。いごをやり始めたきっかけは、おじいちゃんがいごをやっているのを見て、「おもしろそうだな」と思ってやり始めました。いごは少しむずかしいのでやり方をおぼえるのはたいへんでした。少しやり方が分かりだしたらじいちゃんにちょうせんしてみたりもしたけれどまだまだじいちゃんにはかないませんでした。 いごをやり始めて1か月くらいした時に、ぼくはいごの先生の所に習いにいきました。先生は大山先生です。大山先生は教え方が上手でとてもやさしい先生でした。それにこの先生は大会でゆう勝したりして有名な先生です。この先生に教えてもらったため、少しずつ上手になっていきました。 ある日大山先生はとつぜんぼくに 「隆くん、少年少女全国いご大会の県大会にでてみない」 と言われてびっくりしました。なにしろえひめ県からたくさん小学生が集まって一位二位をあらそう大会だったからです。 そしていよいよまちにまった大会の日がやって来ました。でもぼくは「少し勝つのはむずかしいんじゃないのかな」と思いました。でもがんばったけっか二勝二敗でした。少しざんねんだったけれど気を取り直してもう一度練習をし始めて、先生を高山先生にかえました。そして二年生になってもう一度大会に出ました。見ごとじゅんゆう勝でした。それでカップをもらいました。そのカップは金色に光っていて細かいところもていねいに作っていました。ダイヤモンドのように光っていたからダイヤモンドをもらった気分のようでした。とてもうれしかったです。 |
← そのきっかけは、 ← ……と思ったからです。おじいちゃんに教えてもらいましたが、むずかしいので、 ← ゆう勝したこともある有名な…… ← ある日、ぼくは大山先生にとつぜん、 ※ 言われたのはいつごろか。 ← ……からです。でも、ぼくはでることにしました。 ※ 大会のあった日を書いておこう。 ← 待ちに待った ← 勝つのは少しむずかしい ※「二年生になって……」で改行する。 ← ダイヤモンドをもらったような気分でした。 |
小学生の時から囲碁のできる環境が整っているのは、
俳句と同じように、愛媛というお国柄なのだろうか。
書き直した作文 | |
ぼくは、いごをやっています。小学1年生から始めました。そのきっかけは、おじいちゃんがいごをやっているのを見て、「おもしろそうだな」と思ったからです。おじいちゃんに教えてもらいましたが、むずかしいので、やり方をおぼえるのはたいへんでした。少しやり方が分かりだしたら、じいちゃんにちょうせんしてみたけれど、まだまだじいちゃんにはかないませんでした。 いごをやり始めて1か月くらいした時に、ぼくはいごの先生の所に習いにいきました。先生は大山先生です。大山先生は教え方が上手で、とてもやさしい先生でした。それに、この先生は大会でゆう勝したこともある有名な先生です。この先生に教えてもらったため、少しずつ上手になっていきました。 春のある日、ぼくは大山先生に、 「隆くん、少年少女全国いご大会の県大会にでてみない」 と言われてびっくりしました。なにしろ、えひめ県からたくさん小学生が集まって一位、二位をあらそう大会だったからです。でも、ぼくは出ることにしました。 六月十二日、いよいよ待ちに待った大会の日がやって来ました。でも、ぼくは「勝つのは少しむずかしいんじゃないのかな」と思いました。でも、がんばったけっか、二勝二敗でした。少しざんねんだったけれど、気を取り直してもう一度練習を始めて、先生を高山先生にかえました。 二年生になってもう一度大会に出ました。見ごとじゅんゆう勝でした。それで、カップをもらいました。そのカップは金色に光っていて、細かいところもていねいに作ってありました。ダイヤモンドのように光っていたから、ダイヤモンドをもらったような気分でした。とてもうれしかったです。 |
隆くんは夏休みから始めた。これは二作目である。
はじめの作文 | 添削例 |
7月24日に石手川ダムへブラックバスをつりに行きました。着くとたくさんつり人が来ていました。とても暑かったので気温が35度をこしていました。しかも温度計のそばにあったペンがとけていました。 やっとしかけができて第一とう目を投げる時にはもう体力が半分落ちていました。その時さおがググッと引き込まれました。それは投入して3秒ほどたってからでした。40センチ級の大方のブラックバスでした。水面でジャンプしたのでとてもおもしろかったです。 1時間ほどしてアタリが止まったので休けいしているとカメがいました。近くにいたのでさわってみようと思って手をのばすとすばやく泳ぎだしました。しかしそれがとても速く、手足を上手に動かして泳いでいるのを見るととてもおもしろくなってきました。 しばらくするとカメにつづいてヘビがしげみから出てきました。ヘビは近くにいたけど、さわりたくなかったのでにげました。ヘビはあさい所を泳いで何かよく分からないことをしていました。それは見ていてもそんなにゆかいではありませんでした。 気がつくと夕方でした。つり人がぼつぼつ帰りだしたのでお母さんが 「もう終わりね」 と言ったしゅん間引きずられそうなくらい大きなアタリがきました。上げると50センチのちょう大物でした。最高の気分で最後をしめくくれたのでよかったです。 |
※だれといっしょに行ったのかな。 ← とても暑く、 ※「しかも」はいらない。 ※「第一とう目」は「目」があるので、「第」はいらない。 ← すぐにさおがググッと ※「大型の」? 「大物の」? ※1時間にどのくらいつれたのかな。 ← ……止まったので、休けいしていると、…… ※「しかし」はいらない。 ← しばらくすると、カメに…… ← ……しゅん間、さおが引き込まれそうな…… ← ……しめくくれました。 ※「よかったです」をとってみよう。どんな感じだろうか。 |
初めに大物が釣れて、帰りに超大物が釣れたというのは、なかなかドラマティックである。
間にカメやヘビの話が入っているのもよい。ドラマを盛り上げる伏線ともなっている。
書き直した作文 | |
7月24日、石手川ダムへお母さんといっしょにブラックバスをつりに行きました。着くとたくさんつり人が来ていました。とても暑かく、気温が35度をこしていました。温度計のそばにあったペンがとけていました。 やっとしかけができて、一投目を投げる時にはもう体力が半分落ちていました。すぐにさおがググッと引き込まれました。それは投入して3秒ほどたってからでした。40センチ級の大型のブラックバスでした。水面でジャンプしたのでとてもおもしろかったです。その後、27〜31センチメートルのブラックバスが3びきつれました。 1時間ほどしてアタリが止まったので、休けいしていると、カメがいました。近くにいたので、さわってみようと思って手をのばすと、すばやく泳ぎだしました。しかしそれがとても速く、手足を上手に動かして泳いでいるのを見ると、とてもおもしろくなってきました。 しばらくすると、カメにつづいてヘビがしげみから出てきました。ヘビは近くにいたけど、さわりたくなかったので、にげました。ヘビはあさい所を泳いで、何かよく分からないことをしていました。それは見ていても、そんなにゆかいではありませんでした。 気がつくと夕方でした。つり人がぼつぼつ帰りだしたので、お母さんが 「もう終わりね」 と言ったしゅん間、引き込まれそうなくらい大きなアタリがきました。上げると、50センチのちょう大物でした。最高の気分で最後をしめくくれました。 |
← 25〜30センチメートル |
「よかった」という言葉を使わなくても「よかった」様子が描けているという、
そんな作文が書けるようになってくれれば、と思う。
近ごろは音読の効用が見直されている。最初の題は「音読をわすれちゃった」であった。
はじめの作文 | 添削例 |
ぼくはこの前、音読の宿題がありました。家に帰るとまず宿題をして、それから音読をしました。その日は一回もつまらずにていねいに読めたので、上機げんでした。そして計画帳を見て、二、三回見直しをしてぐっすりねむりました。 次の日、学校に行って、ランドセルをあけたとたん、すごいショックを受けました。なぜならあれほどがんばった音読だったけど、音読カードをわすれたからでした。音読カードとは、音読をしたしょうこにおうちの人のサインを書いてくる物なのです。なのでどれほど音読をしても音読カードをわすれたら音読をわすれたことになるのです。 いよいよ先生が教室に入ってきたのでぼくはしぶしぶ 「音読をわすれたのできょうじゅうにやります」 と言いました。 その時はそれで先生はゆるしてくれたけど、朝の会が終わって 「今日、何かをわすれた者はたちなさい」 と言いました。ぼくはおそるおそる立つと、なんとクラスの三分の一ぐらいわすれ物をした子がいました。なので1時間ぐらいおこられました。ぼくは、一回ぐらいわすれ物をしてもいいじゃないか。と思いました。 |
※「ぼくは」をとる。 ← 家に帰ると、まず、ほかの宿題をして、それから ← 二、三回宿題を全部終えたことをたしかめて ※「なぜなら」をとろう。理屈っぽいから。 ← 音読カードをわすれたのです。 ← サインをもらって ※「なので」は「だから」にしよう。 ← ……子がいました。そして、1時間ぐらい ← ぼくは「一回ぐらい……いいじゃないか」と思いました。 ※ この考えはよくないな。実際にそう思ったのなら、書くのはかまわないが、一回でも百回でも、わすれたことに変わりはないからね。 |
この作文には次のような講評を付けた。
「いい宿題が出ているね。音読はとてもいいことなんだ。国語の力がつくばかりでなく、
頭のはたらきもよくなるからだ。作文道場でも音読を勧めている。
国語の勉強をする子には、読めない漢字の読みを教えてから音読をさせる。
その後、読んだ文章のあらすじやあらましなど、文章の要約にかかるわけなのだが、
ときどきはもう1回読んでもらって、すらすら読めるかどうかを確かめる。
すらすら読めれば、その分力がついていることが分かるからだ」
ついでに言えば、初めての子には、今習っているあたりのところを読んでもらう。
すらすら読めるかどうかによって、国語の力がどのくらいあるか、だいたい分かるからだ。
書き直した作文 | |
この前、音読の宿題がありました。家に帰ると、まず、ほかの宿題をして、それから音読をしました。その日は一回もつまらずにていねいに読めたので、上機げんでした。そして、計画帳を見て、宿題を全部終えたことを二、三回確かめて、ぐっすりねむりました。 次の日、学校に行って、ランドセルをあけたとたん、すごいショックを受けました。あれほどがんばった音読だったけど、音読カードをわすれたからです。音読カードとは、音読をしたしょうこにうちの人のサインをもらって持っていく物なのです。だから、どれほど音読をしても音読カードをわすれたら音読をわすれたのと同じことになるのです。 いよいよ先生が教室に入ってきたので、ぼくはしぶしぶ 「音読をわすれたので、今日中にやります」 と言いました。 その時はそれで先生はゆるしてくれましたが、朝の会が終わって 「今日、何かをわすれた者は立ちなさい」 と言いました。ぼくはおそるおそる立つと、なんとクラスの三分の一ぐらいわすれ物をした子がいました。そして、1時間ぐらいおこられました。 ぼくは最初、「一回ぐらいわすれ物をしてもいいじゃないか」と思いました。でも、先生の話を聞いて、音読は目を動かし、声に出すことにより、言葉の美しさと内容を理解することができ、耳から音を聞くことで、三つの感覚器官を働かせ、脳を動かすことが分かりました。これからも音読をわすれないようにしたいです。 |
音読の大切さに気づいてくれたようだ。
隆くんは勉強もがんばっているが、スポーツでは万能ともいえる力をもっているようだ。
その一端は、掲載予定の「⑤『サッカー・エルビス』にうかがわれるが、
ここでは、ここいちばんにかける努力の模様を紹介しよう。
隆くんは、だんだん月に一度まとめて6〜8枚書くようになったが、
それでは時間をとるのが難しいだろうから、
2枚ずつでよいから毎週コンスタントに書こうと勧めている。
今回は2回に分けて書いてきた。
(1) | 添削例・諸注意 |
ぼくたちの学校の運動会は、赤、白、黄、青の、四つのブロックに分かれて戦います。各学年2、3この競技に出場することができます。それ以外に、全校色別ブロックリレーと、全校リレーというリレーがあります。全校色別ブロックリレーとは、各学年各ブロックの男女2位から5位までの人が出場できるリレーです。全校リレーは、一番走るのが速い人が出場できるあこがれのぶたいです。 僕は今、桑山小学校の男子ゆい一の4連ぱの記録をもっています。一方、女子では若原さんが女子ゆい一の4連ぱ記録をもっています。そして今年、ぼくの入った白ブロックは足の速い強ごうたちがせいぞろいしました。みんなの50メートルの記録、ぼくのタイムは8秒1、亀有くんは7秒8、山本くんは8秒0、有川くんが8秒2、三崎くんが8秒3です。 選手を決める時には、まず35人で50メートルを走り、上位10名が選ばれます。 5人ずつスタートラインにならび、ぼくは先生の「ヨーイ、ドン」のかけ声とほぼ同時に、思いっきり地面をけってスタートダッシュしました。しかし、50メートルを半分ぐらい走ったところでつまずきかけて、こけそうになりました。「まずい」、ぼくは心の中でそう思い、こけるのを必死にこらえ、後の半分をダッシュでかけぬけました。タイムは8秒3、トップでゴール、なんとか第1次予選を通過しました。 次に、一次予選を通過した10人が100メートルを走ります。10人が5人ずつに分かれて走り、上位3名が次のステージに出場できます。ぼくは先に走りました。 「いちについて」 ぼくはスタートラインに立ち、落ちついて呼吸をととのえました。「ヨーイ、ドン」、5人がいっせいに走り出しました。ぼくはコースの内側をとり、力を残し、余裕の2着でゴールしました。 |
← 2、3種目 ← 各学年各ブロックで走るのが一番速い ← 4回連続出場、4連ぱの記録 ← このブロックのメンバーの50メートルのタイムは、ぼくは8秒1、亀有さんが7秒8、…… ※「5人ずつ……」の段落を前の段落につなぐ。 ← しかし、半分くらい…… ← 次のステージに進みます。 |
隆くんには、直しよりも続きを書くよう勧める。すると、すさまじいばかりの努力の記録が届いた。
(2) | 添削例・諸注意 |
ぼくはこの日のために、自分の走るフォームを直す特訓をしました。勉強する時は少しこしをうかしたり、足をのばしたり、走る時でも、夏休みに見た世界陸上大阪の、パウエル、タイソン・ゲイの走りを思い出し、うでをまっすぐふり、足で地面をけって真っすぐ走る練習をビデオにとって、何度も何度もチャレンジしました。食生活にも気をつけました。例えば、ジュースやおかし類をかなりひかえ、肉、魚、野菜などをできるだけたくさん食べるようにして、じょうぶな体作りにはげみました。この特訓はぼくにとってかなりきびしく、まさに地獄のトレーニングでした。練習がつらい時は、「ぜっ対この特訓を乗りこえて必ずそうやに勝ってやる」と、自分に言い聞かせました。そして、夏休みが終わるころ、ぼくのタイムは0.2秒も上がっていました。 そして、今、最後の戦いの時が来ました。スタートラインには、桑山小学校五年生白ブロック男子の中で最も足の速い6人です。内側から山本くん、有川くん、五味くん、亀有くん、ぼく、牧原くんの順でした。ひざががくがく鳴って、せなかに一筋のつめたいあせが流れました。 「いちについて」 6人が自分の位置につき、ぼくは5メートル先の地面を見つめました。 「ようい」 横にいる亀有くんの指がピクッと動き、心ぞうがあばれだしました。 「ドン!」 地面を思いっきりけってスタートしました。ぼくが思うには、今までにこれほどいいスタートダッシュは切れたことがないようなスタートダッシュでした。ぼくはコースの内側を走り、トラックを半分まで走りました。しかし、ぼくの後ろ50センチの所には、亀有くんにつめよられていました。ぼくは、残りの力をふりしぼってラストスパートをかけました。ゴールまであと2メートルの時、亀有くんとかたがならびました。ぼくは最後の力をふりしぼってゴールにかけこみました。結果はきん差でぼくが一番。全校リレー出場となりました。 ぼくは念願の、桑山小学校五年生男子唯一の全校リレー5年連続出場を決めることができました。本番の運動会では、全校リレーでも一等になり、白ブロックも見事優勝をなしとげました。ぼくは、夏の特訓はつらかったけど、全校リレーで成果をあげることができ、何事にも努力は大切だと思いました。 |
◎ これは「理に適っている」と言っていいようだ。ハードルの為末選手も同じことをしているということだ。 ◎ この節制は大したものだ。 ※「そうや」というのは亀有くんのことかな。 ← ……6人がならびました。 ← ぼくの心ぞうが…… ※「ぼくが思うには、」を削除する。 ← 亀有くんが迫っていました。 ◎ おめでとう。 ◎ もう一つ、おめでとう。 |
努力のしかた、特に節制については脱帽するほかはない。
実際の添削答案には段落ごとに赤で丸や二重丸、三重丸をつけているが、
今回はスタートからゴールまでのところと最後の段落には三重丸がついている。
作文でも優勝、と言ってよい。
隆くん一家は釣り好きのようで、近県の湖や海外にも釣りに出かけている。
これは、5年生の春休みの出来事である。
「ホゴ」というのは愛媛の宇和海での呼称で、関西ではガシラ、一般にはカサゴと呼ばれている。
その(1) | 添削例・諸注意 |
3月26日、高浜の瀬戸で、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さんとぼくの4人で、船釣りをしました。船は、松山市でも有名な、釣具の海友の海友丸で、かじをにぎるのは海友さんです。 ぼくたちは、朝の7時半に三津浜港から出航しました。生きのいいえさのキビナゴをバケツに入れて、準備オッケー。ぼくとお母さんは船びに、おじいちゃんとおばあちゃんは船の前方にすわりました。瀬戸内海なので、波はたいしてあらくはありませんが、船がスピードを上げているので、波のしぶきが船の中にも入り込んできました。海の風のつめたさと、さっきのしぶきがかかったおかげで少し寒くなってしまったけど、これから船釣りができると思うと、寒さなんかふっとんでしまいました。 ポイントに着いて、海友さんの 「仕かけ入れてくださーい」 の合図で、早速釣りが始まりました。仕かけは海友さんが作ったオリジナルな仕かけです。上3本はアジやメバルねらいで、カブラが針先に付いています。下2本はホゴねらいで、生きたキビナゴを付けます。小さいものは鼻がけし、大きいものは半分に切ってチョンがけします。今回はホゴねらいで来ているので、ホゴのいる海底に仕かけが着くように、いちばん下に40号の棒オモリを付けました。竿は、長さ2メートル70センチで、ふだん防波堤からの底釣り用の竿よりも短めで、しなりも少なくアタリが来てもわかりにくいです。リールも、今までつかったことがない大きさで、ラインは太く、船釣り用なので、なんと300メートルほどもまかれてあるということでした。 さっそく第一投目を入れました。水深が60〜70メートルもあるので、オモリがなかなか底に着きません。潮の流れの関係もあり、ラインが出続けるので、オモリが底に着いているのか、潮に流されているだけなのかがよく分からない状態でした。 ぼくは、底をとるのが難しく、今までの防波堤からの釣りとのちがいにおどろき、ホゴとの勝負の第一ラウンドは、悪戦苦闘をしいられました。 |
← 「釣具の海友」 ← ぼくとお母さんは船の後ろのほうに、おじいちゃんとおばあちゃんは前のほうに……。 ← 風としぶきで少し寒く…… ← 底釣り用に使っている竿 ← わかりにくい感じです。 ← 一投目を(第一投を) ※ 「底をとるのが難しく」を省くか、「底に着けるのが難しく、ぼくは防波堤からの……」とする。 |
釣り好きのせいか、具体的にとても分かりやすく書かれている。
作文はここで切れているが、大きく直すところはないので、また、
隆くんはゆっくり構えていて月に1回くらいしか書かないので、
直しよりも第2ラウンドを優先させて待つことにする。
その(2) | 添削例・諸注意 |
意外にも、最初にヒットしたのは、経験不足のばあちゃんでした。ばあちゃんは、 「なんか重いなあ」 とか、 「ゴミでも引っかけたのかなあ」 とか言いながらまいていましたが、上げてみると、いちばん下にきれいな赤いホゴがついていました。海の深くから急に引き上げられたせいか、目がオバケのように飛び出し、おなかがフグのようにふくれあがっていて、胃が口から飛び出していました。船のイケスに入れると、おなかを上にして、むなびれを動かして、はい泳のようなかっこうで泳いでいました。初めて見るのには、何とも不思議でグロテスクな光景でした。 一匹釣れたせいか、僕たちは調子に乗って、続けざまに、お昼までに21匹釣りました。イケスの中ははい泳で泳いでいるホゴでいっぱいになってきました。 釣り始めて4時間ほどたって、海友さんが 「お昼にしますので、竿を上げて下さい」 と言ったので、いったん竿をあげました。海友さんは近くの島の波の静かなわんの中に船をとめて、食事の準備を始めました。メニューは、海友さん手作りのタコ飯とホゴの入った具だくさんのみそ汁です。 船の上でご飯を食べるのは初めてでした。お天気もよく、波もおだやかで、船はゆりかごのようにゆれていました。ご飯とみそ汁だけでしたが、ぼくは3ばいもおかわりするほどおいしくいただきました。 お腹がいっぱいになって、海友さんから 「そろそろ出航します」 と声がかかりました。ぼくは心の中で「たくさん釣るぞ」と叫び、島を後にしました。 |
◎ ホゴの姿がありありと目に浮かぶ。 ← 初めて見ましたが、 ← 僕たちは調子が出て、続けざまに21匹釣りました。 ◎ ここもおもしろい。書き方がとてもうまい。 |
話はここで切れているが、釣り上げられたホゴやイケスの中のホゴの描写がうまい。
ユーモラスでさえある。書き直すところもあまりないので、続きを催促する。
その(3) | 添削例・諸注意 |
ポイントに着いて、海友さんの 「仕かけ入れてくださーい」 の合図で、ぼくたちはいっせいに仕かけを下しました。ホゴとの勝負第2ラウンドの始まりです。おなかもいっぱいになったし、午後のポカポカした太陽のおかげもあり、ぼくはさらに気合が入りました。ふりむくと、お母さんは半分起きてて半分ねているような状態でした。ぼくが視線を釣り竿にもどした時、後ろで重そうにリールをまく音が聞こえてきました。ふりむくと、じいちゃんの竿が満月になっていました。竿のしなりを見る限り、ホゴとはちがう何か大きな魚がかかっているようです。じいちゃんがリールを急いでまきます。二回、三回、と、その時、海友さんが 「ゆっくり、ゆっくり。あわてんでいいよ。ゆっくりまいて」 と、あわてた様子で教えてくれました。しかし、じいちゃんは何だかよく分からなかったのか、あわてた様子でリールを速くまいてしまいました。と、とつ然満月になっていた竿がフッと元にもどり、引き上げると、ハリに付いているはずのキビナゴが見事になくなっていました。海友さんの話によると、かかっていた獲物はタコで、仕かけがタコ用のものではないから、ゆっくり引き上げないといけなかったんだそうです。この時期のタコはおいしく、海友さんが一番くやしがっていました。 ちょっと残念なムードの中、またぼくが竿に目をもどすと、今度はぼくの左後ろでリールをまく音がしました。さきほどのタコほどのしなりはありませんが、ホゴにしてはなかなかの大物のようです。上げてみると、ホゴが2匹も付いていました。ばあちゃんは1匹を外し、もう1匹にとりかかろうとしました。すると、そこにいるはずの1匹がいません。辺りを見回してみると、ホゴがだっ走して海面に浮いていました。波が速いので、あっという間にホゴが流されて、すでに手のとどかないはん囲にありました。 「あのホゴももったいないから、取りにいこう」 と海友さんが言ってくれました。船の向きを変えていると、空から大きなトビが一羽やってきてホゴを取っていってしまいました。よほどホゴが大きかったのか、トビはよろめきながら飛び去っていきました。一しゅんの出来事で、ぼくらはあ然とし、その後笑いころげてしまいました。 昼からはいろいろなハプニングがあったけど、ホゴは結局47匹釣れました。そのホゴは、にたり、焼いたり、からあげにしたりして、おいしくいただきました。 また来年の春に行きたいです。 |
※ 「ぼくが視線を……」で改行する。 ← おいしいそうで、 ← ぼくがまた竿に…… ◎ そんなこともあるんだねえ。 ◎ 大漁だねえ。 |
具体的に、詳しく描かれているので、場面場面が手に取るように思い浮かぶ。
思わずほほ笑まされもする。
たまたま、この下にトビの写真を入れておいたのだが、
ホゴをかっさらっていくかっこうはこんなふうだったのだろうか。
「入道雲と稲妻」
はじめの作文 | 添削例 |
8月5日、木曜日。塾へ行く途中、ぼくは、もくもくとわき上がる大きな入道雲を見つけました。「大きいなあ」と見ていたら、突然、入道雲の上から地上まで、青白い光が「く」の字に曲がって走りました。ぼくは驚いて「うわっ」と声を上げました。稲妻です。その後も、同じような光がいくつも走りました。 家に帰って、インターネットで、なぜ入道雲ができるのか、また、なぜ稲妻が走るのかなどを調べました。 入道雲は晴れた日に見える巨大な雲で、雲頂は10000メートル以上とされています。入道雲は積乱雲の一種で、正式には雄大積雲といいます。積乱雲は垂直方向に発生しやすく、雹(ひょう)を振らせることがあり、たいていは電光や雷鳴を伴います。 入道雲という名前は仏教からきています。お坊さんが仏教の道に入ることを入道といい、お坊さんのことを入道と呼ぶようになりました。入道雲の雲頂がお坊さんの頭に似ていることから、入道雲と呼ぶようになりました。 入道雲は、川や海、地上の水が急に暖められて、湿気を含んだ空気が上へと昇っていって上昇気流が発生し、水滴が集まって雲になり、それがどんどんふくらんで、大きな雲になってできます。 入道雲から稲妻が発生し、雷が落ちるのは、雲の中にたまった静電気が放電されるからです。それが地上に向かうと、雷が落ちるということになります。ぼくが見たのは、静電気のかたまりが地上に向かって走るところでした。 入道雲は夏の暑い午後によく見られますが、他の季節に全然出現しないということはなく、条件が整えば冬でも見られます。冬には主に日本海側に発生し、地表の冷たい空気が比較的暖かい海上に流れることで、入道雲ができます。飛行機に乗って空から日本海方面を見ると、入道雲の立ち昇っているのが見られるということです。 ぼくは、入道雲と稲妻を見て、それをきっかけにいろいろなことを知ることができました。 |
← ……伴います。その電光が稲妻です。 ◎ 名前の由来の入っているのがいいね。 |